京都大学大学院理学研究科化学専攻

装置

当研究室の実験はすべて,ターボ分子ポンプとイオンポンプ,チタンサブリメーションポンプを併用し,超高真空 (10-7 Pa以下)環境で行っています。

超薄膜作成用超高真空装置:

市販の電子衝撃加熱型のもの(EFM3, FOCUS)や自作蒸着装置を用いて1原子層から数十原子層までのいわゆる超薄膜を作成しています。蒸着レートを水晶振動子膜厚モニターで評価し,吸着構造を低速電子回折(LEED)装置で調べます。最近,低エミッションまたは高速でのI-V曲線(動力学計算に基づく原子構造解析に使えるデータ)の取得が行える高感度カメラを導入しました。自作蒸着装置は低温温度制御機能があり,有機分子を0.05 分子層/minという低速での蒸着量制御を行えます。

 

超高真空・温度可変型4端子電気伝導装置(UHV variable-temperature four-point probe):

超高真空を維持したまま,半導体(または絶縁体)基板上に作成した超薄膜の電気伝導度の測定ができます。4端子は超高真空中で洗浄(アニールまたはイオンスパッタリング)できるため繰り返し使える上,酸化膜や付着物が除去されているので試料との電気的接合が非常に安定し,高精度の測定が可能です。また,液体ヘリウムとヒーターの併用により9-400 Kの範囲で伝導度の温度変化を計測できます。温度変化からは金属超薄膜の電子格子カップリングを評価することや,金属絶縁体転移を観測できています。

 

高分解能角度分解光電子分光(Angle-resolved photoelectron spectroscopy: ARPES)装置(R3000):

エネルギー分解能は約10 meV、角度分解能は約0.1°。試料マニピュレーターに6軸のiGONIO(AVC)を使用して、PCからモーター制御することによりフェルミ面マッピングなどを自動で行うことができます。また液体ヘリウムとヒーターの併用により15-400 Kの範囲で温度を維持することができます。我々の研究室ではバンド計算も行っており、ARPESで測定されたバンド構造と比較、分析することも行っています。

 

角度分解光電子分光装置(ARUPS10):

主流の2次元検出器のタイプ(上記R3000アナライザーもこれ)と違い,分光器が2軸ゴニオメーターに乗って広い角度範囲に放出される光電子をエネルギー分析するタイプ。右手に伸びているのはヘリウム放電管とモノクロメーター。こちらは液体窒素もしくはヒーターを用いることでおよそ100-500 Kの範囲での測定が可能。今は走査型電子顕微鏡も設置されています。もうすぐ改造予定。

 

走査トンネル顕微鏡 (STM) 初号機 (Unisoku USM-1200):

原子分解能で表面を観察できる顕微鏡。液体ヘリウムや液体窒素を用いた低温測定(6 K,80 K)が可能。表面観察だけでなく,独自のプログラム制御とロックインアンプを用いてアトムトラッキングや分子マニピュレーション,局所分光 (STS,IETS)といった「単分子化学」実験も行っている。
STMチャンバー (左) には直にガス導入のためのバルブが取り付けられており,表面を低温に保ったまま,気体を1分子ずつ表面に吸着させることができる。右に見えるのはエレクトロスプレーイオン化(ESI)装置であり,ポルフィリン重合体といった巨大分子を(分子を壊すことなく)蒸着することができる。

 

走査トンネル顕微鏡 (STM) 2号機 (Unisoku USM-1200S-N2):

上記と同様のSTMだが,単分子の電気伝導測定や,分子スイッチの作製にも用いている。

 

電子エネルギー損失分光 (EELS) 装置 (LK tech. ELS5000):

低速電子を表面に入射することで,表面に吸着した原子,分子の振動状態を励起する振動分光法。分子の束縛振動やフォノンといった低エネルギー振動から,分子の倍音 (0→2,3遷移など)に至る幅広いエネルギー帯の振動分光を高感度に行うことができる。エネルギー分解能は1 meV (8 cm-1)。液体窒素を用いた低温測定が可能。
低速電子回折 (LEED) 装置,試料清浄化のためのイオンガン,ガスドーザー (内部フィラメントの加熱により原子状気体も曝露可能),ガス組成を測定する四重極質量分析計,有機分子用蒸着装置などが取り付けられている。

 

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