11月14日付けで、ACSのCrystal Growth & Designから新しい論文がオンラインで公開されました。タイトルは
“Twin-Free Growth of Ultrathin Bi2Te3 Films on CaF2(111)/Si(111)”
です。
異種物質を原子レベルで平坦な界面構造を維持したまま積層する方法として、ダングリングボンド(表面が形成されたとき、結合相手を失った不安定な電子状態)を持たない物質を基板とする、van der Waals (vdW) epitaxyという薄膜作製の“指針”があります。vdWという言葉は、状態方程式の研究で有名な物理学者の名前(J. D. van der Waals, 1837-1923)が由来で、化学的に不活性かつ中性な原子・分子間にも作用する引力のことをvdW力と表現したりします。Siの表面は、Siのsp3の共有結合が切れて、ダングリングボンドを有するため、vdWエピタキシーとしては不向きとなります。この論文では、CaF2がSiと格子整合がよいこと、またその(111)面が不活性なF-で構成されること、さらに電気的に絶縁性であることに着目し、層状物質でありトポロジカル絶縁体でもあるBi2Te3の超薄膜を平坦かつ結晶性よく成長させられるのではないかと考えて行った研究の成果です。
ほとんどのデータは、2022年3月修士卒の檜垣さんの実験によるものです。コロナ禍真っ盛りの、人もまばらな時期に二人でいろいろ試行錯誤をしたことがすでに懐かしいです。以下はその頃、帰り道、京都駅地下で撮った写真です。