先月からですが、黒石くんが主著者の論文がPhysical Review B誌で公開されています。タイトルは
”Tunneling electron induced luminescence from indium films on Si(111)”
です。昨年発表していた3原子層のIn超薄膜の上にさらにInを低温で蒸着することで、平坦な多層膜が成長することをSTMで観察し、層数に応じて非占有状態の量子井戸準位のエネルギーが変化する様子をSTSのデータから示しています。ハイライトはSTM探針からのトンネル電子により励起される発光スペクトルのデータです。探針-サンプル間にかけるバイアスに対して線形に発光ピークがシフトする様子が示されています。このことから量子井戸状態を介した非弾性的なトンネル過程によってギャッププラズモン(とそれに伴う発光)が励起されていることが分かります。
図には一連のデータがコンパクトにまとめられていますが、発光効率の良いAg探針の調整や、ある限られた低温の範囲でのInの蒸着など、系統的なデータをそろえるのに苦労しているのを見ていたので、出版されて感慨深いものがあります。
また、5月には同じ専攻の分子分光学研究室との共同研究の成果が公開されていましたので、こちらも論文リストに追加しています。こちらのタイトルは
”Deciphering cooperative effects in plexciton formation between Ag nanocluster and fullerene”
です。主著者の吉田さんには湯川くんとの光吸収の実験の立ち上げ時にもお世話になりました。元気にしているかな?